ゆじらぶろぐ

構成作家。ライター。文章と言葉で誰かの楽しみを作りたいです。

スリムクラブのM1グランプリ2020準々決勝の動画は必見!

現在、GYAOで配信中のM-1予選動画。

出場漫才師にとってはネタバレ云々が相当大変だとは思いますが、本当に良い時代です。
スマホで手軽に渾身の漫才を観ることができるのは想像以上にありがたいことです。

現在、準決勝まで進めなかった漫才師の準々決勝のネタのみが配信中ですが、この至極の漫才が数十組も観られるのは圧巻の一言。

ネタを観ていると、やっぱりM-1グランプリは別格に激アツだと改めて思うのですが
その中で…


スリムクラブの漫才はエグかった。

これは観てください。

大会は進行中なので、あまりこういうことを言うのはやめておこうと思ったのですが、さすがに面白すぎた。
そんなことを、この場で書くつもりは一切なかったのですが、これは書かざるをえません。

腹がちぎれるほど笑えます。

たしかに、これまでもスリムクラブはずっと面白かった。
独特の間を駆使した、一度見たら忘れられない世界観。
『ワードセンス』とは表現しきれないほどに
言葉の力が突き抜けている。
ワードセンスよりも、『パンチライン』と言う言葉が適切かもしれません。
一語一句に衝撃が乗っかっています。

今回の2020のM-1準々決勝の漫才…

本当に本気やったんやなあ…と、単純に感じます。
なぜか、少し泣きそうになるくらい強い意志を感じざるをえませんでした。

スリムクラブは、すでにM-1で人生を変えています。
2010年のM-1決勝をキッカケにスリムクラブは世の中に解き放たれました。


あれから10年。
ラストイヤーとなったスリムクラブの最後のM-1での漫才はスリムクラブM-1史上ベストパフォーマンスだったと思います。

もう一発、人生を変えられる漫才…

そんな可能性をひしひしと感じる渾身のネタだったはず。

それでも超えられない壁があり、残念ながら準決勝通過はしませんでした。

何度もM-1に出ているスリムクラブは既視感とも戦わなければいけませんが、そこで一歩足らないと判断されたのかもしれません。


結果はどうであれ、この漫才の素晴らしさに一点の曇りもなし。

とにかく、面白いことをひたすら喋っています。
真栄田さんはずっとゾーンに入って、ひたすらに笑いのツボをズバズバ刺してきます。
内間さんもずっと面白い顔とリアクションをしながら、返す言葉がいちいち笑いを増幅させます。

しばらく、忘れられない漫才なのかもしれません。
表現が的確か分かりませんが、どこかスピリチュアルな空気さえも漂わせる2人の話芸。

漫才は本当にシンプルな演芸です。
真ん中にマイク一本あって、相方としゃべるだけ。
賞レースは時間制限こそありますが、ルールはあるようでなし。

テクニック面や構成の巧みさ…
こういった技術が面白さを増長させていれば、加点となる場合も当然あります。

もちろん、私だって10年以上のキャリアがありますので、そのへんのことは理解しております。

しかし、理屈を超えた漫才も時にはあります。

いわゆる、ネタの寸評を求められても言いようがないやつ。
「まあ…とにかく、めちゃくちゃ笑いましたね」
しか言いようがないやつ。

それでした。スリムクラブのネタは。

あそこまで間をゆったりさせて丁寧にふってふって期待させといて…超えてくる。
なかなか、超えられないハードルをきちんと超えてくる。

そればかりではなく、やはり言い方の妙。

あの言い方は良い意味でズルい。おもろすぎる。

稚拙な話をしていると思わせといて、実は深いのか…?
虚実入り乱れる空気感とネタ運び。
さりげなく世の中に斬り込んでいるようで、ふざけまくっている。
ふざけまくっていると思いきや、何かしらのメッセージも感じる。

そして、なぜか笑わずにいられない。

唯一無二だ。こんな漫才できるはずがない。

最後の最後に現実に直面している問題とリンクさせてネタを終える、あの漫才の締め方も私の好みだ。

もしかすると賞レースにおいては賛否あるのかもしれないが、私は好みだ。

現実の話に切り替わり、ネタを終える瞬間、夢から覚めたような感覚になる。

「いったい、何を見せられてたんや…?」
オリジナリティなんて言葉では追いつかない。

もちろん、このネタがM-1グランプリ決勝の舞台でハマるかは分からない。

M-1は予選の段階から魔物が住んでいますが
決勝の現場は、それどころの騒ぎではない。

「準決勝の時と別ネタなのか…?」
全く同じネタなのに、そう思わせないほど得体の知れない圧がかかるのが決勝の舞台。

それがM-1グランプリであり、それこそがM-1グランプリの魅力でもある。
あの審査員の面々にマジマジと漫才を見られている中、下馬評通りに勝敗が決まるほうがめずらしい。
芸事の厳しさや尊さの何たるかを理解していれば理解しているほど、誰だって縮み上がって当たり前。
やはり、M-1グランプリの決勝に権威と緊迫感を与えているのは審査員。

純粋なお笑いライブとして考えれば、M-1は準決勝が1番面白い。
もちろん、緊張感もあるが決勝のそれとは雲泥の差。
漫才師のベストパフォーマンスは準決勝で見られるほうが多い。

それほどにM-1の決勝は恐ろしすぎる舞台なのだ。


実は、かなり前に1度…

スリムクラブのお2人とM-1のことについて話したことがある。

こんなことを勝手に言っていいのか分からないが…

そのネタへの向き合い方は独特だった。

考えるのではなく言葉を降ろしてくるような…
そんな雰囲気を感じた。

心の中に降ってくる言葉を解き放って笑わせる。

漫才との向き合いかた。M-1との向き合い方。

スリムクラブとネタの話をするのは、かなり緊張した。

絶対に安易なことは言えない。そんな記憶がある。

何を面白いと思って日々生きているか?
それが明確にある芸人さんは強い。

もちろん、寄せることだって難しい。
客ウケを狙って、本当にウケることだって
とてつもなく難しいことだ。

しかし、何を見たいのか?と言われれば
何を求めているのか?と聞かれれば

芸人さんが本当に面白いと思っている本音を共有したい。

しょせん、私の個人的な好みだが

たかが好み、されど好み。

 

まだ、ワイルドカードが残っておりますので
最後のM-1を諦めるのは早いのかもしれません。

でも、もし、ダメだったとしても
M-1グランプリ2020準々決勝で見せたスリムクラブの漫才は衝撃を残しました。

やっぱり、芸人さんが問われるのは板の上です。
僕は板の上で輝く人を尊敬します。

さらに、「こんな発想どうやって思いついたん…?」
そう思わせてくれる芸人さんのことは、もっと尊敬します。

腸に備長炭を入れるためのクラウドファンディング…?
うーん、おもろすぎるなあ。
やっぱり、準決勝で観たいぞ!